え……?
私が、ルオンに聞き返そうとした時
背後から、サク…、と誰かが草原を踏む足音が聞こえた。
!
とっさに後ろを振り向くと
そこにはコートを羽織ったレイが立っていた。
視線がぶつかった瞬間
お互い、はっ!と目を見開く。
沈黙が辺りを包んだ。
ど、どうしてレイがここに……?
と言うより、さっきのルオンの言葉は…?
その時
レイが沈黙を破ってルオンに声をかけた。
「なんでルミナがここに居るんだ。
お前、兄弟喧嘩に観客つける気か。」
「違うよ。ルミナがここに来たのは偶然なんだ。
僕が呼んだのは兄さんだけだよ。」
!
え、え…?
“兄さん”?
今、ルオンはレイのことを“兄さん”って呼んだよね?
二人は、ここで会う約束をしていて……
二人の関係は……
すると、私の心を読んだかのように
ルオンは私に向かって口を開いた。
「…認めたくないけど、正真正銘、僕はこの人の弟だよ。
まぁ、母親は違うけどね。」
レイを視線で指しながらそう言ったルオンに私は体が固まる。
この二人が腹違いの兄弟…?!
確かに、似てるとは思ってたけど
横に二人並ぶと、想像以上にそっくりだ。
整った顔つきに、綺麗な碧眼。
髪の色だけが違う。
言葉を失ってまばたきをしていると
不機嫌そうなレイがルオンに向かって言った。
「俺のことを“兄さん”って呼ぶな。
背中がぞわぞわする…!」
眉間にシワを寄せるレイに、ルオンは不敵に笑って答えた。
「じゃあ、“一号”さん、とでも呼ぶ?
“先輩”でもいいけど。」
その瞬間
レイがルオンの胸ぐらを、ガッ!と掴んだ。
二人は、鋭い視線を向けて睨み合っている。
け、喧嘩…?!
会った途端に?!
私は、状況が掴めずうろたえる。
割って入れないほど険悪なムードが辺りを包む中
ルオンが、ちらり、と私を見てレイに言った。
「…ルミナの前で喧嘩はやめようよ。
どうせやるなら、本気でやりたいし。」
すると、レイは小さく目を見開いて
すっ、とルオンから手を離した。
ルオンは、はぁ、と息を吐いて、胸元を直すと
私に向かって声をかけた。
「ごめん、ルミナ。
せっかく会いに来てくれたのに、兄さんのせいで雰囲気ぶち壊しだね。」
「えっ?!」



