闇喰いに魔法のキス




私が、動揺していると

ルオンは優しい声で私に言った。



「もしかして、僕がダウトなんじゃないかって思ってここに来たの?」



っ!


思っていることを言い当てられて、びくっ!と体を揺らすと

ルオンは、ふっ、と笑いだして言葉を続けた。



「やっぱりそうなんだ?ルミナって、本当に考えていること分かりやすいね。

僕はダウトの仲間じゃないよ。もう、ラルフって人の顔も忘れたし。」



“ダウトの仲間じゃない”


私はルオンの言葉に、ほっ、と息をついた。


一気に体の緊張が解ける。



…なんだ、そっか。

やっぱり、ルオンがダウトなわけない。


…よかった…。



私が顔を緩めると、ルオンはそれを見て
にこり、と笑い

草原に腰を下ろしながら、私に尋ねた。



「そういえば、前に言っていた同居人との悩みは解決したの?」


「えっ…!」



自然に話題を転換させたルオンに

私は、どきり、として言葉が喉につかえた。


優しげな瞳が私を見つめる。


私は、ドキドキと鳴り出した胸を落ち着かせながらルオンの隣に腰を下ろす。


そして、小さく顔を伏せながら彼に答えた。



「うん。なんとか普通に話せるようになったよ。

今では、レイの隣にいるのが落ち着くようになって……」



「ふぅん。よかったね。」



にこにこ、とするルオンに、少し恥ずかしくなる。


その時、私は、はっ!とした。


今、さらっと、レイの名前を出したけど

レイの名前をルオンに言うのは初めてだよね。


今まではずっと、“同居人”としか言ってなかったわけだし。


私は、ルオンの方へと視線を向けて言った。



「あの、今言った“レイ”っていう人が私の同居人でね…!

顔立ちはルオンに似てるんだけど、私より五つ年上で……」



その時、ルオンが私の言葉を遮るように口を開いた。



「銀髪で、愛想なくて、素直じゃない、無駄に過保護な悪魔でしょ?」


「えっ…?」



私は、その言葉に目を丸くした。

一瞬、言おうとしてた言葉も忘れる。


た、確かに、レイはそんな感じ…。

悪口しか言ってないような気がするけど…。


私は、驚いて目をぱちぱちさせたままルオンに尋ねる。



「ルオン、レイのことを知っているの?」



するとルオンは、先程までとは違うどこか陰りのある笑みを浮かべて、小さく答えた。



「そりゃ、よく知ってるよ。

同じ血を分けた人だからね。」