私が、無意識にそう呟いた時
ゴォッ!と激しい風が辺りを吹き抜けた。
ミラさんが、とっさに魔力で盾を作り、衝撃から私たちを守る。
…!
ぱっ、と戦場に目を向けると
手負いながらも激しい攻防戦を繰り広げるギルとラルフの姿が見えた。
ギルは積極的にラルフに攻撃魔法を仕掛けていくが、ラルフは素早く剣で応戦し、ギルの攻撃を斬っていく。
ギルの攻撃が、全く当たらない…!
ギルは、まるでわざと魔力を無駄遣いするように、範囲の広い攻撃を続ける。
…ラルフを仕留める気がないとは言っても、あれじゃあ決着がつかないんじゃ…!
その時
ラルフが、ギルの攻撃の隙をついて、黒いイバラを放出した。
まっすぐギルに襲いかかるイバラを、ギルは自身の魔力を放出することで消していく。
タン!とギルが地面に足をついた瞬間を狙って、ラルフがギルの足をすくうようにイバラで払った。
ザザ!と地面に仰向けに倒れ込むギルに、ラルフは片手で持っていた剣を振り上げる。
「っ!!」
ギルは、小さく息を吸い込んで、とっさに手をついて体を跳ねさせ、紙一重で攻撃を交わした。
ギルはその反動を利用して、ラルフの脇腹に蹴りを入れる。
ドッ!!と、鈍い音が響くが、ラルフは顔を歪ませながらも
剣を手にしていない方の腕で自身の脇腹に入ったギルの足を掴み
そのまま研究所跡地を囲む森に向かって、ギルを投げ飛ばした。
ダン!!と、ギルは強く木の幹に体を打ち付けられる。
「かはっ…!!」
ギルが、小さなうめき声を上げた。
「ギル!!」
私がとっさに彼の名前を叫ぶと、薔薇色の瞳が一瞬私をとらえる。
そして、ギルは自分を奮い立たせるように体を起こすと
再びラルフに向かって走り出した。
ギルは、もしかして…
ラルフの命を奪わないように手加減しないといけないから
いつもみたいに上手く戦えていないんじゃ…
不安な気持ちで見つめていると、ロディが、そっと私に声をかけた。
「嬢ちゃん、大丈夫だ。
ギルは、もうすぐ勝つ。」
え…?



