私は、絶句してラルフの言葉を聞いていた。


ギルが大きく目を見開く。


ラルフは、追い打ちをかけるようにギルをまっすぐ見つめて口を開いた。



『本当は、分かっていたんでしょう?

人間じゃ、ダウトに敵いっこないことを。』



「…!」



『分かっていながら、君は“相棒”よりも“最愛の彼女”を選んだんです。』



!!



「やめて!!」



私が、ラルフに向かって叫んだ瞬間

ギルの体に、ドッ!とラルフの蹴りが入り、ギルは地面に強く叩きつけられた。



「かは……っ!」



っ!!



「ギル!!!」



ギルは小さくうめき声を上げて、顔を歪める。


全身の血の気が引いたその時

ラルフが笑い声をあげながら叫んだ。



『フハハ…!弱いですね!感情に左右される今のあなたは、黒き狼よりよっぽど弱い。

…相棒がいなくては、戦えませんか?』



ギルが、ラルフを睨みながら、ぎり…、と歯をくいしばる。


私は、ただ、ギルを見つめることしか出来ない。



…お願い…。

もうやめて……!



それ以上、ギルを傷つける言葉を言わないで…。



私は、唇を噛み締める。



私は、こんな時もギルを支えられない。

何の力も貸すことができない。



…無力な自分に腹が立つ…!



ここで、ギルまで私の犠牲になったら……



ラルフが、体に受けた衝撃で立ち上がれないギルに向かって剣を振り上げた。



…!



はっ、と息をしたその時

ラルフが低く、ギルに言い放った。



『すぐにあなたも相棒の元に送ってあげますよ。

…あの男の最期のように、“真っ二つ”に切り裂いてね…!』



「「!!」」



私は、この世から音が消えたような気がした。



ラルフの言葉が耳に届いた瞬間

何の音も聞こえなくなる。



…あの剣は…

ロディの体を……………?



ギルが、抵抗することも考えられなくなったように動きを止めた。



私は、声が出せずに心の中でギルに叫ぶ。



ギル、逃げて…!


ロディがいなくなって…

あなたまでいなくなったら…


私は………



私は……………!!