!!!


私は、がくん…!と膝から地面に崩れ落ちる。


全身の力が抜けて、何も考えられない。



…ロディが………

この世にもういない………?



ラルフが、ロディを手にかけたの…?



言いようのない憤りと、深い悲しみが胸に込み上げる。



“行け、嬢ちゃん!

後ろを振り返るな!”



最後のロディの言葉が、頭の中にガンガン響いた。


私の…

私のせいだ………。


魔法が使えなくても、強くて、聡明で、頼れるロディに甘えていたせいだ。


いつか、私のせいで“こういう事態”が起きるかもしれないって

心のどこかで分かっていたはずなのに…!



ぽろ…、と自然に頬に涙が伝った。



リオネロに襲われて以来流れていなかった涙が、後から後から溢れて止まらない。


心が、まるで石になったかのように重く、感情の色をなくしていく。



塀から飛び降りた私を抱きとめた時の、あの少し大人なタバコの香り。

酒場のソファに座り、長い指でパソコンを操作するあの横顔。



いくつもの記憶が鮮明に浮かび上がってくるのに

彼に会うことは二度と出来ない。




“嬢ちゃん”




ロディが、そう呼ぶだけで

私の隣にいるだけで

ギルと笑っているだけで


闇に襲われて傷ついていた私の心は軽くなった。



私は、そんなロディに何を返せただろう。



後悔ばかりが押し寄せて、私の心を虚無に染め上げていく。



ごめんなさい……

ごめんなさい………!



浮かんでくる言葉はそれしかなかった。



私が我慢しきれずに肩を震わせた、

次の瞬間



辺りの空気が、ふっ!と変わった。



パァァッ!!



ギルが、一気に魔力を放出する。



と、その時。



目の前にいたラルフが、一瞬で吹き飛ばされ

むき出しになっていた鉄骨に、ドン!!と叩きつけられた。



『がは…っ!』



ラルフが、低くうめき声を上げる。



はっ、と目を見開いてその光景を見つめると

激しい怒りを宿したギルの声が低く響いた。




「…ふざけんな……。」




どくん…!


ギルの魔力に共鳴するように、ビリビリと、辺りの空気が震える。


私の頬に、最後の涙がつぅ…、と伝った。



ギルは、一言そう呟いただけだった。

微かに握りしめた拳が震えている。



私が言葉を口に出せずにギルの背中を見上げると

ギルは自制出来ないほどの激情のこもった声で言い放った。



「お前には闇魔法を使わない…!

攻撃魔法で始末する……!!」



…!!



ギルの怒りの声とは裏腹に、彼の背中からは深い悲しみが伝わってくる。


まるで、今にも後を追ってしまいそうなくらい、深い悲しみ。



ギルは、大切な相棒を奪われた。



…一瞬の苦しみを与えたくらいでは、相手を許せない程の憎しみが魔力のオーラとなってギルを包む。