私は、ギルの言葉に頷いて

目を見開きながら彼に尋ねた。



「ギル、どうしてここに…?!

ロディが、今ギルは来れられないって言ってたのに…。」



すると、ギルは優しく笑みを浮かべて私に答えた。



「まぁ、さっきまではそうだったんだけど。

ルミナが危険な目に遭ってるって知って、ちょっと無茶しちゃった。」



え…?


私が、ギルの言葉に首を傾げると

ラルフが驚いたような声でギルに言った。



『…まさか、あの“罠”から抜け出してくるなんて…!

さすが、エンプティ様と並ぶ上級魔法使いですね。』



“罠”…?


もしかして、ギルはダウトのせいで私たちのところに駆けつけられなかったの…?!


その時、私に優しい表情を見せていたギルがふっ、とラルフの方へと顔を向けた。

そして、さっきまでとは正反対の怒りに満ちた声で言った。



「…ラルフ。

僕の相棒に、何をした…?」



私に背中を向けているから、ギルの表情は見えないが

声のトーンから、相当怖い顔をしているんだということが、ひしひしと伝わってくる。



私が、ぐっ、と手のひらを握りしめ、ラルフの返事を待っていると

ラルフは、薄ら笑いを浮かべながら瞳を輝かせて魔力を放出した。



『…ふっ…。

口で“言う”よりも、“見た”方が早いと思いますよ。』



…?!

どういうこと……?


私とギルが、眉を寄せてラルフを見つめた時

ラルフは、自分の隣に魔法空間を出現させ、すっ、とそこに自分の腕を入れた。


そして、魔法空間からゆっくりと腕を引く。


すると、ラルフの手には大きな“剣”が握られていた。



「「……!!」」



私とギルは、その剣を見て絶句した。



ラルフの手に握られた剣には、赤黒い血が、べっとりと付いている。



私は、ショックで一瞬呼吸さえも止まった。



あれは、本物の“血”…だよね…?

まさか、ロディの…………?



サァッ、と血の気が引いた途端

ラルフが『フハハハッ!』と高笑いしながら言い放った。



『裏道の暗がりに紛れて、黒き狼の姿は見えませんでしたが、この剣は、あの男の体を確実に切り裂きました。

手に伝わった感覚とこの血を見れば、奴がこの世から消えたのは明白です…!』