「…情報屋…!!」



ミラさんが、動揺したように回線を乗っ取った男の名を呟いた。



…やっぱり、ロディの仕業か…!



半ば感心して彼の声を聞くと同時に、俺は違和感を覚える。



…あいつらしくない。


いつものロディなら、直接本部のシステムに繋げることはしない。

こんな、足がつく雑なやり方はしないはずだ。



嫌な予感が頭をよぎった時

俺は本部に響いたロディの声に戦慄した。



『酒場がダウトに襲われた…!』



!!


な……

何だって………?!


タリズマンの二人も、はっ!と険しい顔をしてロディの通信に聞き入る。



『今、俺は嬢ちゃんを先に逃がして“ラルフ”とかいう幹部を引きつけてる。

だが正直、人間の俺じゃあ足止めどころか、数分の時間稼ぎしか出来ない。』



ロディが、ダウトの幹部と交戦してる…?!


俺は、ギリ…!と歯を噛み締めた。


…やっぱり、ダウトは俺がルミナから離れたところを狙って襲って来やがったんだ…!


通信回路を通したロディの声からは、緊迫した状況が伝わってくる。



『場所は、例の“研究所跡地”……』



と、その時、通信に『ザザ…』とノイズが入った。


「ロディ?!」


俺が彼の名を叫ぶと、聞き取りにくい通信の合間に、ロディの声が聞こえる。



『……くそ……追い……れた………

レイ……早く……ちゃん……を…』



その時、『がはっ…!』とロディのうめき声が聞こえ

荒いノイズの後、ブツ!!と通信が途絶えた。



「!!ロディ!おい!!」



呼びかけても、通信が再び繋がることはない。



…嘘だろ……?

ロディ………!!



その時、隣に立っていたミラさんの手から、バサバサ…!と、床に資料が落ちて、散らばった。


はっ!として彼女を見ると

ミラさんは言葉を失って微かに震えている。


その姿は、冷静沈着で滅多に表情を変えないミラさんとは思えないほどだった。



「おい、ミラ!すぐに“研究所跡地”に向かうぞ!

隊員に連絡する準備をしろ!」



ガロア警部の力強い声に、

ミラさんは、はっ!と我に返ったように頷く。



すると、その時

再び本部内に警報音がけたたましく鳴り響いた。



「今度は何だ?!」



ガロア警部が、ギッ!と眉間にシワを寄せて声を上げると

乗っ取られから復活した本部の通信から隊員の声が聞こえた。



『緊急連絡です!本部の周りを、ダウトの黒マントたちに囲まれました…!

数は、ざっと百…!』



!!


ダウトが動き出した…?!



ガロア警部は、ちっ、と舌打ちをすると

「くそ…!足止めのつもりか…?!」と、苛立つように言った。



俺は、すうっ…、と深呼吸をした。

ぐっ、と拳を握りしめ、目を閉じる。


…ロディの状況がわからない今、ルミナに危険が迫っていることは確かだ。


…もう、タリズマンを誤魔化すのも限界だ。大人しくここに居るわけにはいかない…!