《レイside》



「ガロア警部。レイ君からギルの魔力は感知されませんでした。」



ミラさんは、俺を本部へと連行し

魔力がないことを確認すると、ガロア警部のいる最上階の部屋に入ってそう言った。



ガロア警部は、にっ、と笑って俺たちを見る。



「そーか、そーか!良かったな!

俺も、レイは“シロ”だと思ってたぞ!」



わしゃわしゃ、と豪快に俺の頭を撫でたガロア警部は、ミラさんに向かって口を開く。



「ミラ。ギルや闇の情報は掴めたか?」


「いえ…。ダウトが動いているのは確かなんですが、詳しいことは全く…。」



俺は、口の中でココア味の飴を転がしながらタリズマンの会話を聞いた。


…ダウトが動いている。

そう。酒場に送られてきた小瓶も、奴らの仕業だ。


こうしてはいられない。

さっさと酒場に帰って、ルミナとロディに顔を見せないと。



「じゃあ、容疑は晴れたってことで。

俺はこの辺で帰らさせていただきます。」



すると、ガロア警部が苦笑しながら言った。



「悪いな、レイ。

もうしばらくここにいてもらうぞ。容疑が晴れても、事情聴取や、書類の提出があるからな!」



えっ…?!

嘘だろ…!


俺は微かに目を見開いて顔を伏せた。


勝手に逃げようにも、タリズマンの本部は建物ごと闇避けの魔方陣で囲まれていて、瞬間移動魔法が使えない。


まぁ、この姿で魔法を使うわけにはいかないけど…。


帰るまでに、口の中の飴が解けないことを祈ろう。


その時、ミラさんが机の上から資料を手に取って、俺に言った。



「レイ君。今から事後処理で使うこの紙に色々書いてもらうわ。

隣の部屋に移動しましょう。」



俺は頭の中で必死に最善策を練りながら覚悟を決めた。


…こうなったら、名前でも住所でもさっさと書いて

この面倒な書類作成を高速で終わらせるしかない。


俺が、しぶしぶ頷いて、歩き出した

その時だった。



ピピ───ッ、ピピ───ッ



「「「!」」」



本部中に、大きな警戒音が鳴り響いた。


とっさに動きが止まり、緊張が走る。



ガロア警部が、眉間にシワを寄せながら呟いた。



「本部の通信が鳴るなんて、一体何の騒ぎだ…?!」



すると、一人の若めのタリズマンの男性隊員が俺たちのいる部屋に血相を変えて駆け込んできた。



「ガロア警部、緊急事態です!」


「あぁ?!何だ?落ち着いて説明しろ!」



すると、隊員は部屋に走っている通電回路を指差しながら言った。



「先ほど、何者かが本部のシステムに侵入したようで…!

外部から回線を乗っ取られました…!」



!!


その言葉に、部屋にいた俺たちは全員目を見開く。


“外部から回線を乗っ取られた”…?

本部は、そんな易々と突破されるような防犯システムは使ってないはずだ。


俺は、胸騒ぎとともに、ある人物の顔が頭をよぎった。


…まさか…!


その時、耳を突き刺すような機械音が本部に鳴り響き

聞き慣れた男の声が耳に届いた。



『おい、レイ!聞こえるか。』