そ…そんな“最強の防犯システム”みたいな人がいるの…?



私が緊張感に支配される中、ロディの背中を見つめていると

ラルフは笑みを崩さないまま低く言い放った。



『…それならば、昼間にでも“あいつ”とやらの所へ出向いて

無理やり脅して、データのロックを解くパスワードを吐かせればいいだけです。』



…!


なんて奴らなの…?


自分たちの利益の為なら、平気で悪事を働くんだ。



すると、ロディは、ふっ、と笑って

余裕の表情を浮かべ、呟いた。



「…それも無理だな。」


『!…どうしてそう言い切れるんです…?』



微かに目を細めたラルフに

ロディは視線を逸らさず言い切った。



「“あいつ”には脅しなんか通じない。

…それに、お前が口説き落とせるほど簡単な女じゃないからな。」



…!


え……?



私が、はっ!とした

その時だった。



ロディが、爆発の影響で道の脇に転がっていたレンガをラルフに向かって投げた。



ラルフは、いきなりのことに目を見開いた。



とっさに魔法の盾を使って弾いたが、ゆらりとよろめいて私たちから視線を逸らす。



と、次の瞬間

一気にラルフに向かって走り出したロディは、大声で私に叫んだ。




「行け、嬢ちゃん!

後ろを振り返るな!」



「!!」




どくん!と、心臓が音を立て、体が震えた。



まさか、ロディは私を逃がすために、自分がラルフを引きつけるつもり…?!


ロディは、こちらを振り返らない。


私は、ぐっ!と拳を握りしめた。



…私がここに残っても、足手まといになるだけだ。

ロディを信じて、先に行くしかない…!


早くモートンの所へ行って、私が助けを呼ぶんだ!



私は、ばっ!とロディから背を向けると

タン!と強く地面を蹴って走り出した。



後ろから、爆発音や喧騒が聞こえる。



…ロディ…

…どうか無事でいて…!



私は、必死で戻りたい気持ちを押し込め

ひと気のない裏道を走り続けた。