私が、そう強く心に決め、ぎゅっ、と拳に力を入れた

その時だった。



前を走っていたロディが、いきなり足を止め私の方へと振り返った。



そして、言葉を交わす暇もなくロディは私を庇うように抱き寄せて

そのまま脇道に飛び込んだ。



と、次の瞬間。




ドォン!!




「「!!」」




目の前が大きな爆発音と共に、黒い煙で包まれた。



「っ!!」



ロディは、私を庇いつつとっさに受け身を取り、爆風に巻き込まれながら地面へ倒れこんだ。



転がるようにしてそこから遠ざかり、その勢いのまま、ドッ、と壁にぶつかったところで私たちは止まった。



私は、顔を上げロディに声をかける。



「ロディ、大丈夫?!」


「あぁ。…嬢ちゃんは無事か?」


「うん、私は大丈夫…!」



会話をしてゆっくり立ち上がり、辺りを見渡すと

今まで走っていた道が、まるで別世界のように破壊されていた。



聞き覚えのある爆発音とその光景に

私は、はっ!とする。



この爆発は、酒場の前の通りで起こったものと同じ…?

まさか、ダウトが先回りしてたの…?!



その時、黒い煙が風で吹き飛ばされ

その奥に、一人の男の姿が見えた。



黒いタキシードに、メガネをかけたその男は私たちを貫くような鋭い視線をこちらに向けている。



ぞくっ…!



体が震えて、硬直すると同時に

ロディが私の前へ出た。



「…お前は、エンプティの側近だな…?」



え…!


私は、ロディの放った言葉に、はっ!とする。


すると、それを聞いたメガネの男性が

表情を変えずに目だけ微かに細め、口を開いた。



『…さすがは“黒き狼”。ギルの情報屋なだけありますね。

私の名は“ラルフ”。おっしゃる通り、エンプティ様の側近です。』



“ラルフ”…?



私は、その名前を聞いて、何かが引っかかるような気がした。



それに、男性の着ているタキシードにメガネ…。

どこかで見たような…?



その時、ラルフが私をちらり、と見て低い声で言った。



『さぁ、シンの少女をこちらに渡して貰いましょうか。

…抵抗するなら、容赦はしません。』



…!



メガネの奥の、獲物をとらえたような鋭い瞳に、私は体に緊張が走った。



するとその時

ロディが私を背中に隠すようにしながら言い放った。



「…嬢ちゃんは渡せない。

今すぐお引き取り願おうか。」