「…!!」
レイの顔色が一変した。
それを聞いたロディは、ガロア警部に掴みかかり、声を荒げた。
「“ギル隠匿容疑”…?!
ふざけるな、俺たちはギルとは無関係だって言ってるだろ…!」
その時、ミラさんがガロア警部の胸ぐらを掴んでいるロディの腕を、ぐっ!と掴んで冷たく言った。
「情報屋。レイ君を庇うつもりなら、あなたも一緒にしょっ引くわよ。」
「…っ!」
その時、レイの声が酒場に響いた。
「やめろ、ロディ。」
…!
レイの低い声にロディは、はっ!とすると、「…ちっ…」と舌打ちしながらガロア警部から手を離す。
レイはそのままガロア警部に視線を向けるとはっきりした口調で彼に言った。
「わかりました。本部に行きます。
…無罪だと分かれば、すぐに釈放してくれるんですよね?」
その言葉に、ガロア警部は「あぁ、もちろんだ。」と低く答える。
!
…う、嘘…。
レイ、大人しく捕まるつもり…?
“ギル隠匿容疑”って、ギルを庇って隠してるって意味だよね?
私たちは何も悪いことしてないのに…!
私は、カウンターに手をついてレイを見上げ声を上げる。
「レイ、本当に行っちゃうの?!」
すると、レイは、ぽん、と手錠のされていない手で私の頭を撫で、落ち着いた声で言った。
「大丈夫だ、心配すんな。
…すぐ帰ってくるから。」
「…!」
なんで、そんな冷静でいられるの…?
レイ、無実の罪で連れて行かれるんだよ?!
でも、もしレイがギルと繋がっていることがバレたら、このまま帰ってこれないかもしれない…!
しかし、レイはいつものポーカーフェイスを浮かべて、カウンターの棚に手を伸ばした。
そして、モートンから送られてきた瓶から“飴”を一個口に入れると
すっ、とカウンターから出る。
…飴なんかのんきに食べてる場合?!
私がやり切れない気持ちでレイを見つめていると
ロディが、すっ、とレイに近づいて、ぼそりと何かを呟いた。
「レイ、お前タリズマンの本部に行くなんて何考えてんだ…!
正体がバレたら、“ギル隠匿容疑”どころじゃねぇぞ…!」
「ロディ、今は何を言っても無駄だ。こうなったら大人しく捕まって、容疑を晴らすしかない。
魔力を調べられたら、魔力を一時的に消すこの飴で上手く誤魔化す。…はは!まさか用済みの飴がこんな時に役立つとはな。」
「笑ってる場合か、ボケ!」
「…何をコソコソ話してるの?
さっさと行くわよ、付いてきなさい。」
ミラさんの鋭い声色に、レイは、ちらりとタリズマンに目を向け
ロディとすれ違い、酒場の扉へと歩いていく。
…!
レイが行っちゃう…!!
ばっ!と去っていくレイの方を向くが
何を言っていいのか分からないもどかしさがこみ上げる。
すると、酒場の扉が開いた瞬間
レイが小さく私たちを振り返って口を開いた。
「…心配すんな。
ロディ、ルミナを頼んだぞ。」
「「!!」」
私とロディが、はっ!としたその時
レイのもう片方の手にも手錠がかけられた。
「…っ!レイ!!」
私はとっさに彼の名前を叫んだが、無情にも酒場の扉はバタン!と閉まり
レイとタリズマンの姿は完全に私の視界から消え去った。



