闇喰いに魔法のキス




私が、状況を尋ねようと口を開こうとした

その時だった。



バン!!



「?!」



酒場の扉が勢いよく開いて、私たち三人は一斉に音のした方へと視線を向ける。



するとそこには、白いマントを着た

ガロア警部とミラさんの姿。



二人は、以前来た時とはまるで違う鋭い目つきで私たちを捉えた。



えっ?!

ど、どうしてタリズマンが…?!



動揺して彼らを見つめていると

豪快な笑い声とは正反対の低い声でガロア警部が信じられない言葉を言い放った。



「…ギルはどこだ?

隠したって無駄だ。大人しく引き渡せ。」



!!



私は大きく目を見開いて、言葉を失う。



“ギル”…?

一体、どういうこと…?!



状況のつかめない私たちに、ミラさんがガロア警部の言葉に付け足すように言った。



「今朝、匿名で“裏通りの酒場にギルが入って行くのを見た”というタレコミがありまして

ずっと酒場の前で張り込ませてもらってました。」






“匿名のタレコミ”…?!


その言葉に、いつもは動揺を見せないロディも微かに目を細め

レイは黙ってミラさんの言葉の続きを待つ。



「それで先ほど、この酒場の中からギルの魔力を感知しました。

…言い逃れはできませんよ。大人しくギルを出しなさい。」



えっ!!

“ギルの魔力”?!


そんなこと、あり得るはずがない。


だって酒場にはここにいる三人しかいないはずだ。


私は、タリズマンの二人に向かって反論する。



「ギルはここに一度も来てません!本当です!

何かの間違いじゃないですか…?」



すると、ミラさんは凍てつくような氷の瞳で私たちを見つめて答えた。



「タリズマンの魔力探知機は、決して誤作動を起こすことはありません。

酒場からギルの魔力が放たれたのは間違いないんです。」



!!


そんな…?!



その時、今まで無言を貫いていたレイが

タリズマンに向かって声を発した。



「ここに、ギルはいない。

…信じられないなら、酒場の奥を調べても構わない。」



…!

レイ…!



レイの真剣な声のトーンに、ガロア警部が小さく目を細めた。

そして、つかつかとカウンターに近寄り、レイに向かって口を開く。



「俺たちは、ギルに瞬間移動魔法を使わせないようにずっと魔力で威圧していたんだ。

ここにいないというなら、魔法を使わずに逃げたということだ。ギルをどこへ行かせた?裏口から外へ逃がしたのか?」



「俺たちはギルを逃してなんかいない。

…何度聞かれたって、答えは同じだ。」



二人のピリピリした空気に、私はただ黙って成り行きを見守るしかない。



「…そうか。」



ガロア警部は、一瞬辛そうな表情を浮かべて呟いた。



…わ、分かってくれたのかな…?



すると、ガロア警部が、ガッ!とレイの腕を掴んだ。



?!



私とロディが目を見開いた瞬間

レイの片手に、黒く光る手錠がかけられる。






どくん!と心臓が鈍く鳴り、嫌な予感がしたその時

酒場に、ガロア警部の低い声が響いた。



「レイ。…悪いが、お前を“ギル隠匿容疑”で逮捕させてもらう。

タリズマン本部まで来てもらおうか。」