…だけど、レイがギルじゃないという確信が持てたから

私の勇気ある行動は無意味なんかじゃない。



…せめてそう思っておくことで、自分の心を落ち着かせる。



「ごめんなさい。

もう気持ちを切り替えます。」



「ん、なら良し。」



私の言葉に頷いてそう答えたレイは、にこりともせずに仕事を再開する。



…結局、レイが笑ったのを見たのは、パーティ用のドレスをもらった時だけだな…。

あの笑顔がまた見れたら、少しは安心できるのに。



私がそんなことを考えていると

コトン…、と外から音が聞こえた。



…?

ポストの開く音?



私が窓から外を覗いていると、ソファに座っていたロディが、ふいっ、と顔を上げて言った。



「嬢ちゃん、どうした?」


「あ、ポストに何か届いたみたいで…。」



するとロディは、すっ、とソファから立ち上がり、店の外に続く扉へと歩いた。



「郵便なんて珍しいな。

俺が見てくるから、嬢ちゃんはここにいな」



ロディは、そう言って酒場を出て行き

店の前の赤いポストへと向かった。



…私が闇に襲われたと知った時から、ロディも色々気を使ってくれてるんだよね。


最近はダウトも動きがないし、比較的平穏な日々が続いているけど

何もなさすぎると、逆に不安になってくる。



窓越しに外へ出たロディを見つめていると、ロディはポストの中を覗いて、驚いたように数秒固まった。


…?


不思議に思って見つめていると、ロディはポストの中からある小さめの箱を取り出した。

それは“真っ黒な小包”で、いかにも怪しいオーラを放っている。



なに?

あの悪趣味な小包は…。



黒い小包を手に取り、酒場の中へと入ってきたロディは、まっすぐカウンターへと進み

警戒したように眉を寄せるレイに小包を手渡した。



ロディは、レイを見つめながら口を開く。



「差出人の名前はない。

…宛名は“レイ様”ってなってるが、心当たりあるか?」



レイ宛の荷物なんだ…?


私は、窓際の席を立ってカウンターの二人に近づいた。


ロディの隣に並び、カウンターを挟んだ向こう側のレイが持つ小包を見つめる。



レイはロディの質問に顔をしかめたまま答える。



「またモートンの試作品じゃねぇだろうな?

あいつ、美的センスの欠片もない箱送りつけやがって……。」



レイは、面倒くさそうにゆっくり小包の封を開けた。



私とロディは、箱の中身に引き寄せられるようにレイの手元を覗き込む。