闇喰いに魔法のキス




「ルオン………!」




私が、彼を止めようとしたその時

ルオンが、先ほど黒マントたちが放った矢と全く同じものを放出した。



『っ!!』



黒マントたちが逃げる間もなく

その矢は、彼らを迷いなく貫いた。



どくん…っ!!



心臓が大きく音を立てる。



目の前の光景が、ただ、信じられなくて

私は、力が抜けたようにルオンの背中を見つめていた。



黒マントが跡形もなく消え去った時

ルオンが、がくっ!とその場に座り込む。



「!ルオン!!」



急いで駆け寄ると、ルオンはぎゅうっ、と胸の辺りを押さえ

苦しそうに呼吸をしていた。



……!



これはまさか、“リバウンド”…?

やっぱり、さっき、ルオンの瞳が鈍く光ったのは、“禁忌の闇魔法”を使ったから…?



私が言葉を失ってルオンを見つめていると

彼は私を見上げて呼吸を落ち着かせながら言った。



「大…丈夫、これは、軽いリバウンド…。

慣れてるから…、心配しないで…。」



…!


ルオンは、荒い呼吸をしたままだ。



…“慣れてる”…?

どういうこと…?


闇と戦って、禁忌の闇魔法を使うのに慣れてるの…?



私の頭の中に、一つの考えが浮かんだ。



ごくり…、と喉を鳴らして、私はルオンに尋ねる。




「ルオンも……“闇喰い”なの……?」



その時

ルオンの口角が、微かに上がった。







その時、ギルの姿が脳裏に浮かぶ。



ギルは、魔法で姿形や、声を変えられると言っていた。



…まさか、ルオンが“ギル”なの……?



私が、動揺を隠せずにいると

ルオンが私に向かって口を開いた。



「……ルミナ。

僕は“闇喰い”じゃないよ。」






私が、はっ、と呼吸をすると

ルオンは私を見つめながら低い声で続けた。



「…僕がもし喰うとしたら、獲物は“闇”じゃない。“魔法使い”さ。

僕は、敵だと思ったら誰にでも牙を向ける。…たとえ、それが“光”でもね。」



どくん!!



私は、ルオンの言葉に言葉が出なかった。


…どうして…?

ルオンは、魔法使いを憎んでいるの…?



その時、ルオンが、すっ、と立ち上がり

私に買い物袋を手渡した。



はっ、として彼を見上げると

ルオンは、いつもの優しい表情を浮かべて口を開いた。



「ルミナ、散歩は終わり。僕はここで別れるよ。

…怖い思いをさせて、ごめんね。」






私は、ルオンの腕を、ぱっ!と掴んで言った。



「ルオン…助けてくれて、ありがとう。

でも、もう闇魔法なんて使っちゃだめだよ…!」



リバウンドが小さくても、それは積み重なれば大きな歪みになる。


…ルオンが、いつか壊れてしまう…!



すると、私の顔を見たルオンが苦笑を浮かべた。


そして、さっ、と私から背を向けて

ゆっくり歩き出しながら呟く。




「…気づかいありがとう。

いちお、頭の隅にでも入れとくよ。」




…それは、これからも闇魔法を使う気でいるってことなんだろうか。



ルオンって、一体何者なんだろう…?



私は、ルオンの消えていった路地裏を

いつまでも見つめていたのだった。