闇喰いに魔法のキス





私は、ぎゅっ、と手を握って

ルオンに歩み寄る。



そして、真剣な顔をして私を見つめるルオンの顔を覗き込んだ。



「…ルオン。」



「…ん…?」



私は、すっ、とルオンの前に立ち

にっこり、と彼に笑いかけた。



「ありがとう、ルオン。

…ルオンの気持ちは嬉しいけど、ルオンにシンは渡せないよ。」



「…え……?」



私の言葉に

ルオンは、目を見開いてきょとん、とする。


私は、ゆっくりと歩き出しながら、そんなルオンに向かって言葉を続けた。




「大切な友達を、闇との戦いに巻き込ませるわけにはいかないもの。」



「───!」



その時、ルオンの手から買い物袋が、するりと抜けた。


袋はそのまま、ドサッ!と地面に落ちる。


…え…?



私が驚いてルオンを見つめると

ルオンは、はっ!と我に返ったように買い物袋を拾う。



「ご…ごめん、落としちゃった。」


「あ、大丈夫…!卵とかは入ってないから」



私がルオンにそう答えると、ルオンは感情が乱れたような表情でうつむいている。


急に動揺した様子のルオンに、私は躊躇しながら彼の名を呼んだ。



「ルオン…?」



するとルオンは、少し困ったように私を見て

そして小さく呟いた。



「…あ…えっと…。

ルミナが、僕のこと“友達”っていうから驚いて…。」



…!


友達って言っちゃまずかったのかな…?



ルオンにとっては、私は年上だし

それに性別だって違う。



…馴れ馴れしかったかな…?



恐る恐るルオンの様子を伺っていると

ルオンはそんな私に、にこ、と笑いかけた。



「…僕の周り、大人しかいなかったからさ。

友達とか、出来たことなかったんだ。」







その言葉に、私はルオンの手をとって答えた。



「私も…!

お父さんの知り合いの人しか周りにいなかったの!」



すると、ルオンは、ふっ、と笑って私に言った。



「じゃあ…お互い、初めての友達だね。

なんか、変な感じ。友達とか、いらないって思ってたから。」



ルオンが、初めて心から笑ったような気がした。

なんだか、今までよりもルオンに近づけたような気がして、胸が温かくなる。



私たちは、再び歩き出しながら会話を続けた。



「…じゃあ、僕は一生シンを渡してもらえないんだ?」


「うん。もう、気を使ってそんなこと言ってくれなくていいの。

シンは、誰にも渡せないから。」



私の言葉に、ルオンの瞳が一瞬鋭くなったような気がしたが

そんな気配はすぐに無くなり、ルオンはいつもの微笑みを浮かべ、私の隣を歩いた。