くすくす、と笑うルオンを見て、私はだんだんと心が落ち着いてきた。



…ルオンは、軽い感じで言っただけだよね?


過剰に反応した私が変なんだ。



私はふと、ルオンの碧色の瞳を見つめる。


彼の目を見ていると、頭の中にパーティ会場での出来事が浮かんできた。



私は、ルオンに向かって尋ねる。



「ルオン、パーティの日は大丈夫だった?

暴動に巻き込まれたりしてない?」



「え…?」



きょとん、とするルオンに、私はあの日あった出来事をすべて話した。



すると、ルオンはまつ毛を伏せて口を開く。



「大丈夫。僕はルミナと別れた後すぐに帰ったから。

…そんなことがあったんだね。」



私は、パーティの日の別れ際のルオンのことを思い出す。


光る碧眼が、頭の中に蘇った。



「ルオンって、魔法が使えるの?

…“瞬間移動魔法”を唱えてたよね…?」




すると、ルオンは私の質問に黙って頷き
、口を開いた。



「うん。

僕の家族はみんな魔法使いなんだ。」



へぇ…!

そうなんだ…!



私は目を輝かせてルオンを見る。



するとルオンは、私の反応に小さく笑って、自分について話し始めた。



ルオンは、父親から大きな魔力を受け継いだらしく、魔法書も読んだことがあると言った。



魔力は遺伝で伝わるようだが、並外れた魔力を持って生まれる魔法使いは全然いないらしい。



私の脳裏に、ギルの姿が浮かぶ。



…ギルは、敵を一瞬で消し去る魔法が使えるほど、大きな魔力を持っている。


…パーティの日、ルオンもとても大きな魔力を持っているように見えた。



ギルもルオンも、とても珍しいタイプの魔法使いってこと…?




私が興味津々で彼の話を聞いていると、ルオンは苦笑して私を見た。



そして、小さく息を吐いた後

聞き逃してしまうかもしれないほどの小さな声で呟いた。



「僕は、普通の人間に生まれたかったんだ。

…魔力なんて、受け継がなければよかった」



…!


その時、ルオンの顔が少し陰ったような気がした。


急に真剣なトーンでそう言ったルオンに、私は胸がざわついた。



「…ルオン…?」



私が、小さく彼の名を呼ぶと

ルオンはそのまま表情を変えずに言葉を続けた。



「…この国には“光”と“闇”、二種類の魔法使いが存在するけど、僕は両方変わらないと思うんだ。

…人々を幸せにする魔法なんて、あるわけないんだから。」






私は、ルオンの言葉に目を見開いた。



“人々を幸せにする魔法なんて、あるわけない”



その言葉が、私の心に深く突き刺さった。


…お父さんが研究をしていた、すべての闇魔法の魔力を消し去る“名もなき魔法”。


幸せになるための魔法だったのに、結局は“シン”が生み出されただけだった。



…ルオンの言う通りかもしれない。



私は、小さく唇を噛んで、ルオンに言った。



「実はね…。

私の体には、ある魔法が宿っているの。」



「え…?」