やっぱり、みんな色々事情を抱えているんだな…。


私は、彼の境遇に親近感を覚えて話を続けた。



「私も、両親がいないの。

今は、父の知り合いの人と暮らしてるんだ」



私の言葉に、ルオンは「へぇ…」と呟いて、私に尋ねた。



「ルミナは、今、幸せ?」



え…?


ルオンは、微笑みを崩さずに私を見ている。



私は、その質問にすぐに答えた。



「うん…!

私の周りは、優しい人ばかりだから。」



レイも、ロディも……ギルも。

みんな、優しい。



すると、ルオンが小さく首を傾げて私の顔を覗き込むように言った。



「…幸せだって言うにしては、さっき、悩んでるような顔してたね?」



「えっ!」



ルオンの言葉に、私は、かぁっ!と赤くなる。



な…悩んでるの、バレてた…?


パッと見られただけで分かっちゃうくらい、ひどい顔してたのかな、私…。



小さく笑みをこぼしたルオンは、一呼吸おくと

優しげな口調で私に言った。



「僕で良かったら、話聞くよ?

…赤の他人にだからこそ話せることもあるだろうし。」



…!


私は、ルオンの優しい笑みに心が揺れ動く。


“赤の他人にだからこそ話せることもある”…か。


確かに、そうかもしれない。


私は、ルオンのペースに巻き込まれるようにして、言葉を選びながら話し始めた。



「実は…私を家に置いてくれている人に、すごく失礼なことを言っちゃって…

その人と普通に喋れなくなっちゃったの。」



ルオンは、「怒らせたの?」と尋ねて、私は首を横に振る。



「私が、勝手に意識しちゃっているだけなの。

向こうは、普通にしてくれてるんだけど……内心では軽蔑されてたらどうしようって思って…。」



すると、ルオンは少し考えてから私に言った。



「ルミナは、その人に嫌われるのがイヤだ、ってことだよね?」



「えっ…?

う…うん、そうかな…。」



私が動揺しながら答えると

ルオンは子犬のような無邪気な顔で、さらりと核心を突く言葉を言った。



「ルミナは、その人のことが好きなんだね」



「えっ!!!!」



つい、大きな声が出てしまった。


ルオンは、びっくりしたように目を見開き、街行く人も、チラチラと私を見ている。


私は、慌ててルオンに訂正した。



「あの、そういうんじゃないと思う。

ただ、私は…同居しているし、気まずくなると困るなぁってだけで……」



自分でそう言いつつ、頭の中を整理する。



…私が、レイのことを好き…?



いやいや、そんなわけはない。



レイは、私にとって大切な人だし、口が悪くて無愛想だけど、本当はいい人だって分かってる。



でも、それと恋愛感情は別だ。



私が、レイのことを意識しているのは、“ギルだと勘違い”したからで…



私が一人で考え込んでいると、ルオンが私に向かって言った。



「ごめんごめん、そんなに慌てないで。

…ルミナって本当に素直だね。僕の言ったことは忘れて。」