闇喰いに魔法のキス




****


翌日。


私とレイは二人っきりで酒場にいる。



風呂場の事件から

私は意識しすぎてレイの顔を直視出来ない。



レイは、何事もなかったかのようにカウンターでグラスを拭いている。



…もし、あのままレイのお風呂を覗いていたら、どうなっていたんだろう。



最悪の場合、同居解消されて

タリズマンに突き出されてたかもしれないな



私が、ソファに座ってレイを、ちらちら見ていると

キィ…、と酒場の扉が開いて、小さな箱を抱えたロディが入って来た。



「よぉ、嬢ちゃん。

昨日は散々だったな。体調はどうだ?」



「大丈夫、元気だよ。

ロディ、色々ありがとう…!」



私は、そう返事をしつつ

ロディが抱えている箱に目がいった。



「それ、何の荷物なの?」



私がそう尋ねると、ロディが箱をカウンターにドサ、と置いて

レイと私を交互に見ながら口を開いた。



「これはさっき、酒場の前で配達員から受け取ったんだ。

レイ宛の荷物みたいだぞ。えっと…送り主はモートンだな。」



それを聞いて、レイは顔をしかめて口を開く。



「俺宛…?モートンから?」



心当たりがない、といった様子でレイはグラスを拭いていた手を止めて

カウンターに置かれた箱を開けた。



そして、中に入っていた小瓶を注意深く見つめ、同封されていた手紙を読んでいる。



“レイ君。頼まれていた“魔力を一時的に消す薬”です。

ココア味の飴にしときました。舐めている間だけ、魔力が消えます。

パーティ楽しんで下さいね、アディオス。”




「遅…………っ!!

今さら……………いらねぇ…………っ!!」




手紙を読み終わったレイは、脱力してカウンターに突っ伏した。


…?

…何が届いたんだろう?



呆れを通り越し感情をなくした様子のレイに

手紙に目を通し、事情を察したロディが笑い出しながら言った。



「レイ、そんなにパーティに出たかったのか?

残念だったな。うまい料理が食べられなくて。」




…!


私は、その言葉に、はっ!とする。



やっぱり、レイはパーティに出てないんだ。



…じゃあ、私の勘違いなのかな…?



いや、でも…

見間違いなんてしないはず…。



私は、レイへと視線を向けた。



…もし、レイがギルだとしたら……

あの優しくて甘いギルのセリフを、レイが言っていたことになる。



……あの無愛想で滅多に笑わないレイがあんなセリフを言うなんて

全然想像できないけど……



と、私がぐるぐる頭で考えた

その時だった。



レイが、私の視線に気づいたように

ぱっ、とこちらを見た。



碧色の瞳が私をとらえる。



…!



どくん、と胸が鳴った。



すると、レイが感情を悟らせないいつものポーカーフェイスで私に言った。



「……何?

やっぱり、俺になんか聞きたいことがあるのか?」