君が好きだと叫びたい

2日後の、日曜日。


タクトのことを異性として意識し始めてしまった私は、待ち合わせ場所に着いてからも何処かソワソワと浮かれていた。


こんな風に感じたこと、1度も無かったのに。


心臓が口から出てしまいそうで、こんなに緊張しているのは、もしかして世界に自分1人だけなんて思ったり。


ただ、会うだけなのに。


それが、こんなにも難しいことだったなんて。


よく高校生の頃とか平気で会えてたなぁ〜不思議だ、なんて関心していると。


「悪い、道路が混んでた。お待たせ、ミノリ。」


6月の日差しを浴びながら、原付きのヘルメットを外してコチラに向かって走ってくる、2ヶ月振りの幼なじみがそこにいた。


(あれ、タクトってこんなにカッコ良かったっけ?)

爽やかな風を纏いながら駆け寄るタクトに、目を奪われる。

「ごめん、待ったか?」


緊張でノドがカラカラに乾いて、口の中で舌が張り付く。

「ひ、久しぶり!し、身長伸びた?!ついに3メートルになっちゃった?!」


「....何言ってんだ、ミノリ。」


尋常じゃないくらいに、手に汗が滲む。

その場を取り繕おうと口走れば、頭上からの冷ややかな視線が突き刺さった。


「い、いや、ごめん、なんでもない。」


人類の進化でいうと、今の私は猿人に退化しているところだろう。

変な緊張感でまともに言葉を交わすことさえ、ままならないのだから。

「私、今ゴリラなんです。ごめんなさい。今、心は4足歩行で毛むくじゃらなんです...」

「ふはっ、なんだよ、それ。まるで意味分かんねぇーよ。ははっ、」


明るい笑い声は、私の心までも明るく灯してくれた。


つられて笑えば、まだぎこちないけど昔のように口を開ける自分がいて。


「久しぶり、タクト。会いたかったよ。」


目を細め、笑いながら歯を見せる私がいた。


「ああ、久しぶり。どっか行くか。乗れよ、後ろ。ヘルメット積んであるから。」