黒髪セミロングの人が話しかけてきて、
手を差し出されてしまった。
私が戸惑っていると、斜め前の人が
話しに入ってきた。
「そんな急に言われても困るだけだろ?
ごめんねぇ?こいつ馬鹿だから」
「馬鹿に馬鹿、言われたくない!」
「は!?お前より馬鹿じゃないし!」
言い合いが始まってしまい、
いつものことなのか誰も止める気配はなく、逆に笑いながら見ていた。
「たく、転入生の前でやめろよな?
狐乃江さん、こいつは桐生翔ね?
で、俺は上軌槙だ。よろしく」
「えっと…よ、よろしくお願いします」
「そんな敬語いらないよ?同い年なのに」
同い年だから、敬語はいらない…
そうだったのか…今までは
そんな事いってくれる人なんていなかった
それが私の普通だからって…
「狐乃江さん?」
「あ、の…し、紫苑で…いい」
「うん!よろしく、紫苑!」
私は今度こそ、差し出された手を
握り替えした。
いつぶりだろうか…人に名前を言うのは…

