「追試前にまた教えてあげるから。ね?」 子どもをあやすように頭をなでてやると。 「バカにしてるでしょ。てか追試になるの前提で話さないでよ」 隼斗が頭に乗ったあたしの手首を握る。 太陽に照らされて黒く輝く前髪。 その間からのぞく漆黒の瞳に睨まれた。 一瞬、時が止まったかと思った。 その瞳に吸い込まれそうで。 いつものように、睨まれただけなのに。 「隼斗、初日のテストでボロボロだったもんな」 隼斗の隣で健吾が言う。 3人は普通の会話に戻っていた。 なんだったんだろ、さっきの変な感じ。