「どうしよう呉羽ぁーー」
昼休みになって、クラスのほとんどが外へ遊びに行った中、
那雪は机に突っ伏し、呉羽は那雪の正面に座って呆れたような顔をした。
「どーするもこーするもないでしょ。
全く……だから夏休みに学校見学行ったところ
書けばいいじゃんって」
「だってどの学校も、なんかしっくり来ないんだもん」
「夏休み中もそんなこと言ってたけど、
いい加減決めないと推薦間に合わなくなるよ。
特に私立だったりしたら」
「うーーー」
何が不満なんだか……と、呉羽は呟いた。
呉羽はとっくに行きたい学校も決まっていて、
夏休みはぐだぐだ文句言う那雪を
色々な学校に連れていったが、
どこに行っても那雪はうーーーん、としか言わなかった。
「どんな学校がいいの?」
と、聞いても
「どんなって言われても……」
と、結局いつも曖昧なままだった。
「私はとっとと修行して一人前の陰陽師になりたいし」
東条院の家は、最低でも一年山篭りの修行をして
はじめて一人前の陰陽師として扱われる。
那雪も呉羽も、前線で戦う有能な陰陽師ではあるが、
いづれどちらかが東条院家の当主の名を名乗るとしたら
その修行がなければ名を次ぐことは出来ない。
「いっそ高校行かなくてもいいじゃん。
ていうか、行かない方がとっとと陰陽師になれるし」
「またそう言う……」
そう言って那雪は結局夏休みもろくに勉強しなかったのだ。
「私は別に特別高校行きたいわけでもないし……」
「なんだ東条院、今聞き捨てならない言葉が聞こえたぞ」