「うーーん、……私、呼ばれてる……?」
「そうだ。東条院。何度も呼んだぞ。
……それでも寝ているとはいい度胸だな」
「……ううぇえ?」
開掛けのまぶたの隙間から、
額に怒り血管が浮いている教師の顔をが見えた。
「うああ!!」
「おう、おはよう東条院。
よーぉく眠れたようだなぁ?え?」
おっとぉ……。。。
「あは、は、はは、先生おはようございます、おほ
おほほほほほほほ」
そう、ここは那雪と呉羽の教室、
四季中学校3年3組のクラスで
絶賛数学の授業中であった。
「睡眠は大事だもんなぁ東条院?」
「そ、そうですよね〜」
なにやら不穏な空気が先生の背後から漂い始めた。
「ちなみにお前まだ進学先決まってなかったよなぁ??」
「あ、あーー……はい……」
目の前には、レポート用紙の束が置かれた。
「秋にもなって志望校決まってねぇのに
授業も寝る。いやはや、とんだ秀才様ですこと」
「あ、あははははは……」
少々ねちっこい嫌みだ。
「来週までに、第1志望校と
滑り止めの高校を決めてレポートにしてこい」
「えっ」
「1校につき2枚な」
「えええええっ」
「ついでに、こっちも忘れんなよ」
辞書以上の分厚さの公立高校の過去問が、
圧倒的存在感で那雪の机を独占した。
「……うわぁ」
那雪は、過去問を数ページペラペラとめくり
笑顔を引き攣らせた。
「首席のお前なんだ、行こうと思えばどこだって行けるんだから
もうちょっと受験生だと自覚して頑張れよな」
ぺし、と教科書で問題集を叩いて
教壇へと戻って行った教師の背中を眺めつつ
小さくあくびしてから、どうすっかな……と那雪は呟いた。