「もう……!
はぁ……もういいわ。
那雪にはいくら言っても無駄なのは分かってるし
そんなことよりとっとと学校に行った方がいいか」
「え、ちょ、く〜れ〜は〜!」
呆れた顔を隠すこともなく、
一人歩くテンポを上げた呉羽に
出遅れて那雪が追いかけて行った。
そろそろ、紅葉の季節だった。
通学路はやや遠回りながらも、
綺麗な銀杏並木の道をこの時期は通うのが通例だった。
秋紅や黄ののどかな日に染められた木の葉たちは
色様々な絵の具をそこら中にぶちまけたように
足元に広がっている。
異常気象の進む中
その世界だけは切り取られたかのように、
四季折々を顕著に示している。
そう、異常気象とは、
ここ数年ばかり真冬でも雪が少ない。
北寄りの地域でさえ、
冬は過去最低降雪量を、更新するほどだった。
遠くでチャイムのなる音が響いてきた。
どこからともなく真っ赤な紅葉と出会った。
寒い冬が来る前に
紅葉は紅いコートを身につけて、
フカフカの地面へと散っていく。
美しくも
切ない
紅葉の一生だ。
人もまた
愚かしく儚い生き物だと
そう気づくのはまだ先の話だ。