「実はな、その日勇の誕生日なんだよ。
それであいつの大学の友達も連れてきて
お祝いでもしようと思っててな。」

「えっ…勇さん誕生日なんですか!」

「あぁ。だから柑奈ちゃんもどうかと思ってよ。」









来てくれたらきっとあいつ喜ぶぞー、と


店長さんはそう言うと
私に向かって、歯を見せて笑う。










…土曜日……お誕生会……。











「い、行きます!
頑張って予定合わせます…!」

「お、そうかそうか!ありがとう!」









私がそう返事をすると

店長さんはさらに笑みを深めて
私の肩に手を置いた。





そして「あ、やべ!」と声を漏らすと


仕込みに戻るために
急いでお店の中へ入っていく。







開かれた扉から中を覗くも

まだお店に、勇さんはいないようだった。









「勇さん、まだいないみたい…。
それよりどうしよう!プレゼント!!」

「柑奈、誕生日のこと知らなかったの?」

「うん。今までそういう話したことなくて…。」









好きな人のことなのに、情けないなと思いながら
私がカナにそう言うと



カナは「うーん……。」と考えながら



私の方に、視線を向ける。









「誕生日3日後だし……
仕方ない、今日は聞くのやめてプレゼント買いに行こっか。」

「!」

「その代わり、土曜日に自分でちゃんと聞くんだよ?」









カナはそう言うと

お店から駅の方へと体を向けて
私を連れて、歩き始めた。







私はそれに頷きながら


内心少し助かったと思うように
ホッと 息を吐く。