夢殺し


夢の中では、雨が降っていた。


(また夢か…いや、でも今回の夢はやけにリアルだな)


ザーザーという雨の音で、自分の独り言が消されてしまうほど、今回の夢は現実そっくりだった。

横殴りの雨が全身に当たる感触も、肌寒くなっていく感覚も、本当のことのよう。


これは、本当に夢か?と疑ってしまう。


僕は、家の中に入った。
だけど、そこは僕ではない…誰かの家だ。


『ただいま』


僕の口は、僕の意に反し、勝手に動いた。


どういうことだ!?今までの夢なら、僕はある程度自由に身動きできたはず。
勝手に体が動くなんてことはなかった!

それに、今『ただいま』と言った声も、僕のものではない。

今、ここにいる僕は、一体誰のものなんだ!?


僕は声を出そうとするが上手く声が出ない。


さっき、僕が言った独り言が聞こえなかったのは、雨の音のせいではないよかったようだ。