でも、夢は夢だと自覚していないから夢なのであって、僕はそんな普通の夢を見ることに憧れていた。

そもそも、明晰夢を見たって、そんなに自慢できるようなことじゃないし。


さて、そろそろ学校に行く準備をしなくては。


学校に着くと、幼馴染の川澄水鳥(カワスミミドリ)がすでに来ており、黒板をきれいにしていた。

「あら、貴之(タカユキ)。
今日はずいぶんと早いのね」

朝から爽やかな笑顔で、水鳥は僕に言った。

水鳥は成績優秀、運動神経抜群、おまけに容姿端麗で男子にも女子にも人気なヤツだ。

胸のあたりまで真っ直ぐ伸びた黒髪、ぱっちりとしているけれど主張しすぎていないタレ目、ふっくらとした唇には、幼馴染の僕も思わず見惚れてしまう。

コイツも、僕が毎回明晰夢を見るのと同じようにある特定の種類の夢を見る。

コイツが見るのは“凶夢”____