『………よし』


そう言って、僕は立ち上がった。

もちろん、僕の意思で立ち上がったわけではない。


どこへ行くのだろうか?


僕は、ゆっくりと階段を下りた。
足音を立てぬよう、ゆっくり、ゆっくり………。

まるで、誰かに気付かれてはいけないように……。


僕は、ある部屋の前で立ち止まった。


その部屋の扉からは、うるさいテレビの音と、クチャクチャと何かを食べているような音が聞こえる。

その音も、やけにリアルで、僕の耳は少し痛くなった。


『……』


僕は、扉をじっと見つめた。
その眼差しには憎しみがこもっていた。

どうやら今の僕は、この扉の向こうにいる人物のことを相当嫌っているようだ。


僕は、また足音を立てずに、移動した。