心の傷


望side


「人魚姫になりたいとかダサい!!!」


「人魚姫になれるわけないじゃん!!」




ある夏の日プールサイドでそう言って笑う2人の女子生徒。


そして、もう1人は泣きそうな顔で黙ってる女子生徒。



ガシャァン!


見ていられなくなった俺はプールと運動場を隔てるフェンスを思いっきり叩いた。


3人がいっせいに俺の方を振り向く。


「お前ら人の夢、バカにしてんじゃねぇよ!!!人がどんな夢、持っていたって自由だろうが!!」


「す‥すみません!!須崎先輩!い‥行こ!」


そう言って女子生徒2人は逃げるように走って行った。


「大丈夫?」


俺はフェンス越しにその女の子に聞いた。


「だ‥大丈夫です。‥あ‥ありがとうございます。」


その女の子の笑顔に俺はドキッとさせられた。


「べ‥別に‥ただ俺は腹が立っただけだし。それに‥俺、人魚姫‥嫌いじゃないし‥。」



「えっ!?」



「人魚姫、いい夢だな。君ならなれると思う。誰に何て言われようと負けんなよ。」



そう言って、俺はその場を立ち去った。心臓がドキドキしていた。



その後、聞いた話でその子は水泳部で1つ年下の綾瀬美凪というらしかった。











目を開けるとそこには白い天井があった。


「先輩、目が覚めましたか!?」


まだぼんやりとする意識の中で声のした方を見ると制服を着た1人の女子がいた。


「み‥なぎ?」


そう言うと‥動揺した声が返ってきた。


「私は永倉です。今、先生を呼びますね。」


その声の主は陸上部の後輩、永倉智未だった。


永倉は枕元にあるナースコールに手を伸ばした。


その時、美凪が流されていった光景が蘇った。


ガシッ!!


「えっ!?」



俺は思わず永倉の腕を掴んでいた。



「永倉。美凪は?あいつはどうしたんだ?」


そう聞くと、永倉は口をつぐんでしまうのだった。


何かよからなぬことになっていることは確かだった。








意識が戻り、俺はあと2、3日入院することになった。


いろいろ調べてもらったが、どこも異常はなかった。が、念のためにと入院することになった。


親も来たが俺は今は誰とも会いたくなくて、すぐに帰ってもらった。


永倉の話によると神秘の泉に入ったとき、俺はいつの間にか岸に上がり気を失っていたという。


そもそも俺と永倉は美凪を追いかけていたときに、会っていた。その後を永倉は追いかけてきてくれたようだった。


まぁ、そのおかげで俺は助かった。永倉が119をしてくれたおかげだ。


俺は軽い低体温症と診断された。


それから俺は1日眠り続けたらしい。そして、夜となっていた。


だけど、美凪は‥