「美奈!
見ろ!美奈の好きなパンケーキできたぞ!」
満面の笑みでテーブルの上にパンケーキを置くお父さん。
それを優しい笑みを浮かべて見守るお母さん。
「お父さん!お母さん!大好き!」
幼い私がそう幸せそうな顔で言う。
幸せだった。あの頃は何もかも幸せだった。
お父さんは小さな会社を経営していた。
お金持ちじゃなかったけどとても幸せだったんだ。
お父さんは私のヒーローのような存在だった。
「美奈の誕生日は水族館に行こうな!」
私は水族館が大好きでいつも駄々をこねていた。
誕生日には家族三人で水族館に行って楽しかった。
それから少し経った。
私は寝室で寝ていると大きな声が聞こえた。
「そんなこと言ったってしょうがないだろっ!!!
女は黙って従ってればいいんだよ!!!!」
ドアの隙間から覗くとお父さんがお母さんへ怒鳴っていた。
お父さんの怒った姿なんて初めて見た。
怖かった。自分でも足が震えていることがわかった。
立っていることでさえやっとだった。
「うるさいっ!!!」
そういいお父さんはお母さんのお腹を蹴った。
倒れたお母さんを殴って蹴って…首を締めていた。
「助けなきゃいけ…」
自分でも気づかないうちに声が出ていた。
でも体が動かない。
体が震えて動かない。
怖い…夢であってほしい。
あんなのお父さんじゃない。
お父さんは優しくて、よく笑って、ヒーローみたいに強い。
あんなのお父さんじゃない。
お父さんの手が離れお母さんは咳き込んでいた。
嫌だ…こんなの嘘だよ。
お父さんはお母さんのことが大好きで傷つけるはずがない。


