「初めまして。谷尾と申します。いつも苑子さんからアミカさんのお話は聞いています。とても優秀で、いい子だって」
谷尾さんは50代くらいの、いかにも紳士といったような優しそうなおじさんだった。
茶系のブレザーにきちんとネクタイをしている。なるほどビルのオーナーということは、お母さんのお客様みたいなものなんだろう。
それにしてもこんなおじさんにまで、私のことを話してるとは思わなかった。
「初めまして、アミカです。母がお世話になっております。勉強がありますので、失礼します」
きちんと頭を下げて、それから3階の自分の部屋へ階段を駆け上がった。
部屋の鍵をかけて、それからカナに電話をかける。
【もしもしっ!】
「早いよ、カナ」
呼び出し音の前だったから、笑ってしまった。
【だってビックリして! どうして多賀宮くんと?】
「えっとね……」
いくら親友のカナでも、さすがに出会いのことは話せない。
だから花山先生に、たまたま勉強の面倒を見てくれと頼まれたことだけ説明した。
そしてそのお礼に、今日出かけて、日曜日に遊園地に行くことも。

