最後の瞬間まで、きみと笑っていたいから。


多賀宮くんと別れた後、バスの中でスマホを見たら、カナからメッセージが来ていた。


【ちょっとーどういうことなのー?】


猫のスタンプが驚いた表情をしている。


そりゃそうだよね。ビックリしちゃうよね。


【ごめんね、誘ってくれたのに】


申し訳なくなりながら返事を送る。

するとすぐに既読になった。


【電話していい!?】

【今バスの中だから、帰ったら電話する】


とりあえずそう返事をして、スマホをカバンにしまった。


ふうっと息を吐き、それから窓の外を見つめる。


電線に区切られた薄紫。その少し下の橙色の空。アスファルトに伸びる街路樹の影。
こんなに世界はきれいだったかな。

太陽が沈み始めた街並みの景色は、昨日と同じはずなのに、どうしてだろう。なんだかきれいに見えた。


いったいなにが変わったの。

私は昨日の私と一緒のはずなのに……。


不思議で仕方なくて、いつまでも、窓の外を眺めていた。