えっ、今なんて言ったの?
ぽかんとしたまま、多賀宮くんを見上げた。
「俺はお前のことそこそこ気に入ってるよ。だからこうやって一緒にいるんだろ。誰にも強制されてない」
彼は黒い目で隣を歩く私をじっと見つめる。
「他人の評価なんか気にするな。自分の生き方は自分で決めるんだ」
自分の生き方は自分で決める……。
「……うん」
うなずくと「よし」と言って、多賀宮くんはわたしの頭を手のひらでポンポンと叩いて「いくぞ」と、やって来たバスに乗り込んだ。
そこそこ……というのは、とりあえず横に置いておくことにした。
だって、初めて多賀宮くんの心の内側に触れられたような気がしたから。
嬉しかった。すごく、嬉しかったんだ。

