最後の瞬間まで、きみと笑っていたいから。


えっ、今なんて言ったの?


ぽかんとしたまま、多賀宮くんを見上げた。


「俺はお前のことそこそこ気に入ってるよ。だからこうやって一緒にいるんだろ。誰にも強制されてない」


彼は黒い目で隣を歩く私をじっと見つめる。


「他人の評価なんか気にするな。自分の生き方は自分で決めるんだ」


自分の生き方は自分で決める……。


「……うん」


うなずくと「よし」と言って、多賀宮くんはわたしの頭を手のひらでポンポンと叩いて「いくぞ」と、やって来たバスに乗り込んだ。


そこそこ……というのは、とりあえず横に置いておくことにした。


だって、初めて多賀宮くんの心の内側に触れられたような気がしたから。


嬉しかった。すごく、嬉しかったんだ。