「えっ、いいよ、ちゃんと追いかけるよ!」
「いちいち振り返るのが面倒なんだよ」
そして多賀宮くんは私の隣に並ぶ。
誰がどう見たって不釣り合いなのに、多賀宮くんは気にならないんだろうか。
夜、人目があまり気にならない時ならまだしも、今は生徒がたくさん見ているのに。
「お前、なに考えてんの?」
バス停の端に立ち、唐突に多賀宮くんが尋ねてくる。
「なにって……」
「言いたいことあるなら言え。黙ってちゃわかんねぇよ」
「えっ、でも、言いたいこと言うって、怖くない?」
「なんで」
「なんでって……こんなこと言って嫌われたらどうしよう、とか」
「わざわざ嫌われるような悪口を面と向かって言いたいのかよ。だったら黙ってた方がいいかもな」
「そ、そうじゃないよ、別に悪いことじゃなくても、言いづらいっていうのはあるんだよ」

