「えっ、あれ……ほら」
「多賀宮くん?」
靴を履いて校舎から出ると、女子が私と多賀宮くんを見て、驚いたような顔をしている。
その視線は、歩けば歩くほどどんどん多くなる。
「えーっ、ショック……」
「なんか意外ー」
ヒソヒソしてるけど、隠す気もなさそうだ。
私ならいいと思ってるんだろう。
そうか。彼の隣を歩くというのは、こういうことなんだ。
彼はなにかと目立つ生徒で、私はそうじゃない。
なんだか多賀宮くんに申し訳ないかも。
だからつい、歩くのが遅くなって、気がつけばどんどん、彼との間に距離ができてしまった。
バス停を目の前にして、多賀宮くんが立ち止まり振り返った。
「……お前、もう疲れたの」
「そういうわけじゃ……」
「しょうがないな」
多賀宮くんは私がノロノロ歩くのに合わせて、歩調を緩めてしまった。

