失恋記念日




ああ、身軽だ。なんて身軽なんだろう。このまま空も飛べそう。


終わってしまった、けど、たしかにわたしは、真大と出会えて楽しかった。

後悔なんて、しない。

出逢わなければよかった、なんて思わない。


けど、真大はどうだったかな。

わたしが縛り続けていた数カ月、苦しくなかったかな。身動きしづらくなかったかな。楽しかったかな。

きっと、わたしとは正反対の気持ちなんだろうけど。


なんて目から熱いものが零れ落ちそうになったとき、不意にぽん、と肩を叩かれた。



「双葉。俺、おまえといて楽しかったよ」

「……まひ、ろ」

「ありがとう」



待って、なんていう間もなく、それだけ言うと真大は家まで駆けて行った。


大好きな、後姿。あの後姿を当分わたしは忘れることができないんだろう。一生忘れられないかもしれない。忘れられないまま、大人になるかもしれない。

いいや、それで。わたしはずっと真大のことが好きで、好きで、たまらないまま死んじゃうんだ。それでもいいや、なんて思えちゃう。


本当、あきれるくらい、真大が好きだ。


そっか、楽しかったのか。

少し頬を緩ませて、また駅まで歩き出す。

それならよかったな。わたし、真大にもらってばっかりで、なんにもできていないような気がしていたから、そう言ってもらえると嬉しい。

たとえお世辞でも、嬉しい。なんて、真大はそんな器用な人間じゃないか。