お嬢様のご命令




「あっ!!」




「えっ?」




お嬢様は突然ものすごいスピードで走っていく。




広い庭をかけてゆくお嬢様。




「あ、あぶなっ……」




俺は走るお嬢様をあとから追いかける。




お嬢様に怪我をさせるようなことをしては執事という仕事なんてつとまらない。




「とう!」




お嬢様は急にしゃがんで、何かを捕まえたようだ。




「……ど、どうされたのです……か」




俺は少し息を切らしながら、しゃがみこむお嬢様に尋ねる。




「見て陽向!トカゲだわっ!」




お嬢様は捕まえたトカゲを大事そうに持ち、それを俺に見せてきた。




「と、トカゲ……」




呆然とトカゲを見つめる俺。




「かわいい!ほら陽向っ、もっと近くで見てみて!」




ずいっと俺にトカゲを寄せてくるお嬢様。




生き物とか、あまり興味のなかった俺はそんなまじまじと観察したことがない。




 犬とか猫ならわかるけど……トカゲってかわいいのか?




 しかも、女の子ってこういうの嫌がりそうなのに……。




そんなことを考えながら、俺はお嬢様に言われたようにトカゲを近くで見てみる。