「え?」




俺は、思わずまたお嬢様の方に顔を向けてしまった。




ゲームをしていた手も、止まる。




「私にも、特別好きなものなんてないわ。」




「……そう……なんですか」




俺は、お嬢様の少し悲しげな表情から目を離すことができなかった。




なんだか、小さい頃の俺を見ているようで……




「あ!もうほら、また陽向サボってたでしょ!やられちゃったわ!」




「あっ、申し訳ありません!」




もう一度ゲームの画面を見直した時には、「ゲームオーバー」と文字が並んでいた。




「……まぁいいわ、ちょうど疲れてきたところだったし。」




お嬢様はそう言ってゲーム機の電源を切る。




「……お役に立てなくて申し訳ありません。」




俺はさっきから、謝ってばかりだ。




こんなことばかりで、お嬢様に捨てられる日もまたすぐにやってきそう。