「陽向は、何か好きなものはあるの?」




「好きなもの……ですか。」




 好きなもの……?




 そんなの、考えたことなかった。




 どう答えれば……




「ないの?」




「……そうですね、特にありません。」




 正直に言ってしまった。




「ふーん。じゃあ、好きな食べ物は?」




「え」




 好きな食べ物……




俺は、捨てられたあの頃から、食べ物をそんなにおいしく感じたことがない。




小さい頃、おいしいと感じた食べ物の味も、もう忘れてしまった。




だから、好きな食べ物も思いつかない。