俺はお嬢様の方に視線をやり、「失礼いたします」と一礼をしてお嬢様の部屋に入る。
パタンと部屋のドアが閉まった、その時だった。
「こむろひなた!だっけ」
お嬢様はいきなり俺の名前を呼んでくる。
「はい、小室陽向と申します。」
俺はにこりと笑ってもう一度自分の名前を言う。
「ふーん。」
お嬢様は俺のことをじっと見てくる。
綺麗な茶色い瞳が、俺をしっかりととらえていた。
「失礼ながら、お嬢様のお名前を教えていただけないでしょうか。」
俺はお嬢様のことをなにも知らない。
だからこうやって聞いていくしかないのだ。
まぁ、だいたいのお嬢様は意地悪で教えてくれないんだけども。
「ゆずきよ!」
意外とあっさり教えてくれた。


