お嬢様の部屋は階段を上がり、今度はさっき案内された時とは逆の方向の、左の通路に行く。




そして、階段を上がって曲がったところにある部屋から数えて3つめのところの部屋で、お嬢様の母親の足が止まる。




「ここよ。」




そう言うと、お嬢様の母親はドアをノックする。




「私よ。新しい執事がいらしたの。」




お嬢様のお母さまが、ドアの向こうにいるお嬢様に声をかける。




ガチャ。




大きなドアが少し開いた。




ドアの隙間から、半分だけ姿が見える。




顔を少しだけ見せるお嬢様。




くりっとした大きな瞳が特徴的だった。




「今日からお嬢様の執事をさせていただきます、小室陽向と申します。よろしくお願いいたします。」




俺は、半分しか見えないお嬢様にニコッと笑みを見せて挨拶をする。




「……入っていいわよ。」




お嬢様はそう言ってドアをさっきよりも開けてくれた。




半分しか見えなかったお嬢様を、今度はしっかりと見ることができるようになった。




お嬢様の綺麗な黒くストレートな長い髪がやわらかく揺れる。




見たところお嬢様は高校生くらいだ。




俺はお嬢様の部屋に入る前に、お嬢様の母親に挨拶をした。




「ご丁寧に、ご案内ありがとうございました。」




そう言って深々と頭を下げる。




お嬢様の母親は、何も言わずに俺の前から去っていった。