宛先は天国ですか?




パッと顔を上げると、相変わらずラフな格好もよく似合う将太さんが立っていた。

ニコニコと笑いながら隣に腰掛けて、わたしのやっている問題を覗き込んでくる。


「…将太さんこそ、早いですね」

そう言うと、将太さんは「そうですか?」と首を傾げた。

「今日は集合時間の5分前にきましたから、いつもよりは少し遅いと思いますが」

腕を時計を見ながらそう言うので、わたしもつられてスマホの時計を見た。

確かにスマホの時計は25分を映していて、知らない間に20分近く経過していたことに気が付いた。

…まったく、いつの間に。


「お勉強ですか?大変そうですね」

全然分かりませんよ、とわたしのノートを覗き込みながら、将太さんは目を細めて言った。

わたしはパタンとノートを閉じると、唇を尖らせる。

「わたしも全然覚えられないんですよ」

将太さんがわかったらたまったもんじゃないわ、そう言いたげに将太さんを見た。

わたしが覚えられない問題を、将太さんが分かったら絶対自信を失う。


…あ、まあ、そもそも失うほどの自信なんてないのだけど。