宛先は天国ですか?




それから数日だけ経った金曜日の夜のこと。

月曜日の実習準備もさっさと終わり、帰りはそう遅くならなかった。

ただ、勉強のお供にジュースが欲しくて駅近くのコンビニに寄った。


そのときに、ほんと偶然にも、わたしと同じようにコンビニに寄る将太さんを見かけたのだ。

「将太、さん」

思わず声をかけてしまって、それからハッとした。

…話すことがないのに、何を話しかけているんだ。


わたしの声に、将太さんは振り返ってふわりと微笑んだ。

「偶然ですね、暖々さん」

すっかり慣れたように名前を呼ばれ、思わずドキッとした。


…うっ、何を話そう…。


「あの、お仕事、お疲れ様です…」

おどおどしながらもそう言うと、将太さんは柔らかい笑みを浮かべた。

「暖々さんは学校帰りですか?そちらもお疲れ様です」

ただお疲れ様と言われただけなのに、心臓がバクバクと大きな音を立てる。