宛先は天国ですか?




わたしが提案したとおり、ショッピングモールに入る。

そこまではいいのだが、買うものが思い浮かばず会話もないまま。

沈黙って、1番辛い。

何か話さなきゃと焦って焦って、言葉がどんどん見当たらなくなっていく。


「佐川さん、」

ぐるぐる思考を巡らせていると、将太さんがふと声をかけてきた。

「暑くないですか?」

10月初め、まだまだじわりと汗の滲む季節。

暑くないか、と聞かれれば、暑いのかもしれないなぁ。

一度涼し気な今日の服を見てから、「少し」と、小さな声で答えた。


わたしの回答に将太さんはニコリと微笑むと、「こっちに行きましょう」とわたしの手を引いた。

手から伝わるぬくもりに、わたしはどうしようかと慌てた。

こんなにドキドキとしたことはない。

わたしは、こんなときにどうしたらいいのかを知らない。

こんなときに、心を落ち着ける術を知らない。