宛先は天国ですか?




わたしの言葉に将太さんはぱちぱちと何度かまばたきをして、諦めたようにふと笑みを浮かべた。

それから、「そうですね」と言ってクスクスと笑う。


「確かに、お手紙の返事は私が書いていました。

バレてしまうとは、思いませんでしたが」

いつまでも純粋な子供のままだと、そう思っていたのだろう。

確かに純粋であったその頃は、両親から返事がきたとはしゃいだものだ。

天国に手紙が届くだけならまだしも、そこから返事が返ってくるなどあり得ない事。

それでも、純粋な子供であったときは信じていた。

けれど、小学校高学年になる頃には、誰かが書いてくれているんだと気付いてしまうものだ。


それでも信じているふりをして手紙を送り続けたのは、返事が欲しかったから。

誰からか知らない人から送られてくる、その温かい返事の手紙が、読みたかったから。


…それにしても、本当に将太さんだったんだなぁ。

ホッとしたような感覚に、ふと胸をなでおろした。