宛先は天国ですか?




遠慮なくその場で手紙を開けると、癖のある字がつらつらと並んでいた。

流し読みしていくと、「郵便局員さんを困らせないで」と、「暖々のこと、見てるからね」と、いかにも母親らしいことが書かれている。

わたしのお母さんなら言いそうな、そんなセリフ。

なんて、もうお母さんの顔もお父さんの顔も、うっすらとしか覚えていないのだけれど。


「ありがとう、ございます」

お礼を言うと、将太さんは嬉しそうな笑みを浮かべた。


だけれどやはりモヤモヤしたままじゃあ嫌で、ちょっと、意地悪のつもりで、

「わざわざ、書いてくださって」

ふふっと微笑みながら、そんなことを言ってみた。


その瞬間に、将太さんは驚き、うまく騙せなかったことに肩をすくめた。

それに対して、わたしはクスッと笑みを浮かべる。

「もう、小さい子供じゃないんですから、郵便局員さんが返事を書いてくださっていること、分かってますよ」