宛先は天国ですか?




家についたのは6時30分だった。

6時ちょっと過ぎにはついてしまう予定が、まさか30分もオーバーしてしまうなんて。

まったく、と心の中で突っ込みを入れてから家の扉を開けた。


「あら、ののちゃんお帰りなさい。遅かったわねぇ」

祖母はへたりと頬に手をあてがって、シワのある顔をもっとしわくちゃにする。

毎日毎日こうして出迎えてくれるのは本当にありがたい。


小学生の頃、両親を失ったわたしを哀れむ人は数知れないほどにいた。

特に近所の大人たちがそうであった。

みんなみんな、馬鹿の一つ覚えみたいに「可哀想」としか言わなかった。

いつしか可哀想になっていたわたしを、可哀想じゃなくしてくれたのは祖父母だった。


「おじいちゃんもちょうど帰ってきたところなのよ」

祖母が早くおいでとリビングの方に招く。


リビングにはわたしと祖父の分の夕食が用意されていた。

朝食は共に食べることができても、夕食はなかなか一緒に食べることができない。

祖父母は5時半には夕食を食べる。

そのため居残りをしたら一発アウト、1人で食べることになる。

たまにこうして祖父が出かけていて、祖父と2人て食べることもあるのだが。