宛先は天国ですか?




それから、膝に力を入れて立ち上がったわたしは、手にある手紙を見た。

とりあえず、持っていた手紙をポストの中に滑り込ませる。

ストンと落ちた手紙を見て、わたしは大きくため息をついた。


「帰ろう」

ポツリと声に出して呟いて、家のある方を向いて歩き始める。

なんとなく名残惜しい気がして振り向くも、将太さんの姿はもちろんない。

ただ、街灯がキラキラと赤いポストを照らしていた。


…仕事帰りっぽかったし、この時間にいるってことはこの近所に住んでるのかな。

不意にそんなことを考えてから、わたしはふいっとその場に背を向けた。


だから、だったらなんだと言うのよ。

学生と社会人、時間が噛み合わないことは明確だ。

きっとたまたま今日は残業じゃなかっただけだ。

たまたま帰るべき時間に帰ることができただけなんだ。


…それでもまた、会えたらいいななんて、思ってしまうわたしはほんとに馬鹿。