指摘された先生が、わけがわからないと肩をすくめた。
「そういうのって?」
子供みたいな無垢で純粋を演じる早野先生に、璃子はまた顔を歪めた。
本気で言ってるのと、今にも先生に突っかかりそうな表情をしている。
「暖々が話聞いてなかった原因を、恋だとかそういうのに勝手に結びつけるの。
それに、暖々に好きな人がいるならいるできっと隠してるだろうし、それをわざわざ公の場で言う必要なんてないんじゃないですか?
しかも授業中に、人の秘密を」
淡々と指摘をしていく璃子の言葉に、クラスがしんと静まり返った。
気まずいというか、だんだんと早野先生を見る目が冷たくなっていく。
しかしさすが早野先生と言うべきか、そんなの気にせず困った顔をすると、
「あ、そうだよね、秘密にしてたかもしれないのに、バラしちゃだめだったね。
佐川さん、ごめんね?」
パチンっと手を合わせて、わたしに軽く頭を下げた。
…もちろん、許さないなんて言えるはずもなく。
「…あー、はい、大丈夫です」
いやいやではあるが、許してしまった。


