それに、わたしは先日、見事に将太さんに追い返される“夏帆さん”の姿を見ている。
まさか、将太さんがそれだけ邪険に扱っていた夏帆さん、もとい早野先生に、本心を話すとは思えない。
…わたしの前だからわざと早野先生を追い返した…?
良い人とはいえ、将太さんはそこまで八方美人ではないはずだ。
第一、将太さんから会おうと誘ってくることだってあったんだから。
ギュッと拳を握りしめて、わたしはじっと早野先生を見据えた。
何も言わず見つめられ、早野先生は驚いたように肩を小さく震わせた。
それから小さく深呼吸をしたわたしは、
「…たとえ、そうだとしても、将太さんがわたしに直接、わたしから離れたいと言わない限りは離れないつもりです。
早野先生からいくら言われても、将太さんから言われない限りは、離れませんから」
淡々と、それでも必死に早野先生に伝わるように、そう言葉を紡いだ。


